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勤務医が利用できる特定支出控除とは?制度の概要と使い方を解説

税金の視点から考える勤務医と開業医の大きな違いは、経費の範囲について。開業医だったら経費計上できるものが、勤務医に認められないのは不公平だ。そう考えたことがある医師は少なくないのでは?今回は、勤務医が確定申告によって計上できる経費について解説していきます。

勤務医と開業医の経費格差は大きい

先日ブッシュクラフトインストラクターの研修を受けてきました。
これは野営をするための技術や知識を身に着けるための研修になるのですが、結構な金額だったんですね。

私の本業は税理士なので、本業には全く関係のないこの研修の費用。どうあがいても経費になりようはありません。というか税理士倫理から、どうにかして経費にしようとするのもいかがなものかと思います。

ただ、この研修費、本業に関係があればどうでしょう?

開業医のかたは本業に関係があるので堂々と経費に入れると思います。ところが勤務医のかたはどうでしょう?勤務先で経費精算してもらえなければ完全に自己負担ですね。これって不平等じゃありません?

この不平等という点を争点に最高裁昭和60年3月27日大法廷判決で大島さんという人が争いました。結果、大島さんの原告側が負けましたが、これをきっかけに税制改正が行われ1987年に特定支出控除が誕生したのです。

しかし、この制度、非常に使い勝手が悪くほとんどのかたが利用できない制度となっていました。この制度に2013年改正が入り、当初より使い勝手が良くなりハードルが若干下がっています。

今回はこの制度「給与所得者の特定支出控除制度」のご紹介です。

特定支出控除制度とは

給与所得者の特定支出控除制度とは、給与所得者が一定の支出を行った場合、その年のその支出の額の合計額が「特定支出控除額の適用判定の基準となる金額」を超えるときは、確定申告によりその超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができる制度です。

……と、国税庁のHPに記載があります。
何のことか意味わかりませんよね?要は会社員が仕事のために負担した領収書の金額が一定額を超えたら、一定の金額を給与所得から控除するという制度です。

ただし、どのような領収書も無制限に認めるのではなく「控除する金額」「控除する項目」「手続き」の3つのハードルがあります。

控除する金額

控除する金額は「給与所得控除の半額を超える金額」が適用金額です。

給与等の収入金額給与所得控除額
1,800,000円以下収入金額×40%-100,000円 550,000円に満たない場合には550,000円
1,800,000円超 3,600,000円以下収入金額×30%+80,000円
3,600,000円超 6,600,000円以下収入金額×20%+440,000円
6,600,000円超 8,500,000円以下収入金額×10%+1,100,000円
8,500,000円超1,950,000円(上限)
給与所得控除 計算表 令和2年分以降

上記が給与所得控除額の計算表となります。
たとえば給与等の収入金額が600万円の場合、給与所得控除の金額は164万円ですので、半額の82万円以上の支出があればそれを超える金額を特定支出控除として控除できます。

控除する項目

「控除する項目」として認められるのは「通勤費」「転居費」「研修費」「資格取得費」「帰宅旅費」「勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費)」限定です。

具体的には下記の内容です。

  • 通勤費・・・一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出
  • 転居費・・・転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出
  • 研修費・・・職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出
  • 資格取得費・・・職務に直接必要な資格を取得するための支出
  • 帰宅旅費・・・単身赴任などの場合で、その者の勤務地または居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出
  • 勤務必要経費(65万円が限度)・・・(1)書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用。(図書費)
    (2)制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用。(衣服費)
    (3)交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出。(交際費等)

令和2年以降は、勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅行で、給与の支払者により証明された通常必要な支出(職務上の旅費)も特定支出になります。

また、会社から補填される部分があり、かつ、その補填される部分に所得税が課税されていないときは、(ようは経費精算されているもの)は、その補填される部分の金額は対象から外されます。ちなみに教育訓練給付金や母子(父子)家庭自立支援教育訓練給付金が支給される部分がある場合における当該支給される部分も、対象から外されます。

手続き

この制度を受けるためには確定申告をおこなう必要があります

その際、
・特定支出に関する明細書(自分で記載)
・給与の支払者の証明書(会社に作成してもらう)
2点を申告書に添付するとともに、搭乗・乗車・乗船に関する証明書や支出した金額を称する書類(領収書等)を申告書に添付または申告書を提出する際に提示する必要があります。

この中でも「給与の支払者の証明書」を準備するのがハードル高いです。一人会社ならまだしも、勤務している病院の理事長とかを巻き込んで作成することになりますのでこの時点で断念される方が多い制度です。

まとめ

経費の面で不利な部分が多い勤務医。特定支出控除を利用するハードルは高いものの、検討してみる価値はあります。
適用を検討される際には、税理士に必ず事前にご相談ください

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藤井 健

藤井 健

税理士・東京タックスコンサルティング代表取締役
2003年株式会社大原学園税理士講座法人税法講師、2007年新日本アーンストアンドヤング税理士法人(現EY税理士法人)を経て、2012年東京タックスコンサルティング設立。
顧客に対して節税対策や税務調査対応を中心としたアドバイスに加え、キャッシュフローの改善や企業体質に応じた資金調達アドバイス提供サービスを実施
趣味はサーフィン、渓流釣り、キャンプ(ブッシュクラフトインストラクター資格取得予定)

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