Profile
秋田護(あきた・まもる)
ウィクリニック 銀座院院長・整形外科医
2007年日本大学医学部卒業。大学病院、関連病院勤務を経てNGOに参加、ラオスやカンボジアを中心に途上国で医療支援活動をおこなう。複数の医療法人、クリニック勤務を経てウィクリニック銀座院院長に就任。日本整形外科学会専門医、博士(医学)

専門領域・診察範囲が広い整形外科の道へ
人体や生物学に興味を持ち、「将来はスペシャリストになりたかった」という秋田さんが医学部へ進んだのは自然の流れだった。
日本大学医学部を卒業し、初期研修修了後、日本大学医学部整形外科学教室に入局。学生時代は循環器内科など、内科系の科目を志望していたが、研修医として医療の現場に立ち、具体的に将来の働き方を検討するうちに迷いが出てきた。
心臓血管外科にも興味を持ったが、決めきれずにいた。
「紆余曲折あった末にたどり着いたのが整形外科です。整形外科の診療範囲は首からつま先まで全身に及びます。老人の腰痛を診る医師もいれば、骨や筋肉にできる癌などの抗癌剤治療をメインにおこなう人もいます。スポーツ選手が高いパフォーマンスを発揮するために医学的にサポートをおこなうこともありますね。幅広い領域をカバーしている点に魅力を感じました」
体を動かすことが好きだった点も整形外科に興味を持った理由の1つだ。専門によって医師のキャラクターに偏りがあるものだが、整形外科はアクティブな医師が多く、かっこよさを感るロールモデルとなる先輩がいた。

環境や設備がまったく異なる途上国での医療を経験
整形外科の専門医、医学博士を取得後、大学病院で働きながら次のステップを模索した。
「世界を視野に入れて進路を検討しました。自分の活動の場を日本に限定する必要はありません。かと言って、欧米など先進国へ留学しても、言語や文化が違うだけでやることは変わらないため、あまり魅力を感じませんでした」
選択したのは、NPOに所属し、東南アジアへ行くことだった。
「ラオスやカンボジアなどを中心に活動しました。選んだ理由は好奇心ですね。どんな状況なのかを経験してみたかった。医療NGOなどは使命感で来る人が多いですが、そういう人ほど挫折して帰っていきます。してあげる意識があるから、現地で雑に扱われることに耐えられないんでしょうね」
現地での活動は無給どころか、渡航費や滞在費など、数百万円自己負担での参加である。施しの気持ちだけでは続けられない。そこで何かを得ようとするか、自分のためになることをできるかが重要だという。
「東南アジアでは医師としての経験以外にも、たくさん得るものがありました。人脈はその一つですね。日本ではなかなか会えないような大御所研究者にも、現地で出会うと同じ日本人として近い距離で話せます。他にもJICAやWHOなどの機関ともコネクションができました。帰国してからも現地での体験を講演したり、活動の幅が広がりました」