美容外科医として勉強と自己研鑽は不可欠
同業の医師の手術を見学し、質問を重ねることで知識を増やしていったそうだ。それだけでなく、形成外科の医師からも学ぶようにしているという。
美容外科の世界では学ぶことが難しい、タトゥーやほくろの切除に使える再建術。病気が原因となった悩みを抱える患者もいる。美容外科医も病気の知識は不可欠だ。美容外科以外の道に進んだ医師とも交流を持ち学び続けている。
「ずっと望んできた美容外科医になりましたが、大学病院で専門医を取らなかったことに引っかかっている部分はあります。患者さんの幸せに高い技術で貢献することでは負けないように努力し続けたいです」
技術と同時に、美容外科医に必要な能力を尋ねた。手術が上手であることは必須とした上で、女性らしさ、繊細さも強みとなるとした上で、コミュニケーション能力も不可欠であると言う。
「美容外科にとって成功は、患者さんの希望を叶えることです。そのためには、患者さんの要望を正しく吸い出すことが不可欠です。この人は何を求めているのか、瞬時に察知する。言葉にした内容だけでなく、掘り下げた部分にある望みや悩みを見つける必要があります。
そのために、話術であったり、親しみやすさであったり、コミュニケーションの部分が重要になります」
開業に重なった第三子出産

奥村さんは2020年の8月に自身のクリニックを開業する。開院日と出産予定日は数日違いだった。
「美容外科は、保険医と比べると生活は規則的です。当直もオンコールもないですし、確実に週休2日は取れ、残業もありません。給料のベースも高いですし、がんばった分だけ自分に返ってきます。ただ、それでも忙しい生活ではあります。現在3人目を妊娠中ですが、働き方については常に迷いながら子育てをしていました」
奥村さんは、湘南美容クリニックの初の女性分院長でもある。努力を重ね、結果を出すことで目標を叶えてきた。
シッターの活用など自分で労力を掛ける必要がないことはアウトソースと割り切った。同じ美容外科医である夫も協力的であった。
しかし、子供へかける時間の不足は大きなジレンマにつながる。
「開業した理由の1つは子供の幼稚園入学です。母親の役割が大きいため、自分で時間をコントロールしやすい働き方に変えることにしました。同級生には専業主婦のお母さんが多く、子どもにかける時間が充分にあり、意識が高い方ばかりでした。自分は子どもに手をかけてあげられていないのではないかと、差にへこんでしまうことも多かったです」
第一子を出産したときは、病院長だったため最短で復帰した。
保険医は病院に医療職用の保育所が併設されていることも多いが、美容外科はほとんどない。
これから生まれる第三子や、女性スタッフの働きやすさも考え、奥村さんのクリニックには赤ちゃんを連れて働けるようにスペースを設けているという。自分のクリニックだからできることだが、開業はハードな選択だ。
「時間のゆとりを得るためだけなら、非常勤になったり、美容皮膚科などに転職する方がずっとラクだと思います。いろいろな縁とタイミングが重なって開業する事になりましたが、妊娠も重なっていっぱいいっぱいになることもあります。考えたり決断したりすることがたくさんある中で、これからスタートですが、多くの患者さんの助けになれるようにがんばっていこうと思います」
自分の望む働き方・生き方を明確に持ち、目標に向かって努力を重ねてきた奥村さん。美容外科医を目指す医師が増える中で、先駆者として道を切り開いていく。