父の病院を継ぎ夫婦で開業
娘を出産後、父の病院を継ぐために一緒に働きはじめた。クリニックの上に実家があるため、子育ては実母の協力を得ることができた。
「夫の働き方も劇的に変わりました。今は子どもの送り迎えを分担したり協力して育児ができる環境です」
ワークライフバランスを両立しやすい状況ではあるが、開業医となると診察以外に考えることも多くなる。
「患者さんに対する責任が重くなるのはもちろんですが、経営などお金周りのことや、採用や人事、細々した雑務なども大変です。はじめてのことばかりですし。時間は限りがあるので、基本的に専門外のことは外注するようにしています」
何事にも前向きな土屋さんだが、人を雇う立場になると、自分の努力だけでは解決できない問題も出てくる。
その中でも、大切にしているのはスタッフ一人ひとりを大切にすることだ。
「私はタレントの西野亮廣さんを尊敬していて。西野さんの、”1を大事にしろ”という言葉に共感して実践しています。何をやるにも、関わってくれる一人ひとりを大切に扱うことが物事をうまく進めるために不可欠だと思って。スタッフには楽しいと思いながら働いて欲しいです」
土屋さんの考え方は周囲に人を引きつける効果もあった。開業することを知り、大学病院時代の同僚看護師が加わってくれた。アルバイトを希望する後輩医師も多い。
スタッフが楽しく働ける環境だと、病院の雰囲気も良くなる。患者さんが接する時間はスタッフの方が長いからだ。
「私が診察できる時間はわずかです。医師に直接質問しづらいと感じる患者さんも少なくありません。そのため疑問や相談事をスタッフが聞くことも多いんです。質問された時にスタッフがきちんと答えられたら患者さんのためになるので、スタッフにも知識を持って対応して欲しいと思っています」
美容にも詳しい皮膚科医として
2020年春、つちやファミリークリニック浅草院を開業した。クリニックに訪れる患者さんから、美容に関する相談を受けることが多かったのが理由の1つだという。
「美容皮膚科は自費診療になります。利用する機械なども異なるので、入谷のクリニックでは対応が難しい部分もありました。もっと目の前の患者さんの悩みに応えていきたいと思い、浅草院をオープンしました」
とはいえ、浅草院は美容皮膚科専門ではなく、保険診療も扱う。
「美容皮膚科に特化する選択もあるでしょうが、私は一般皮膚科がある上で、美容は追加の選択肢だと考えています。保険診療で来院されてから、実は美容皮膚科の治療も受けたいという方は少なくありません。保険内ではできる処置も限られているので、もっとキレイになりたいという希望に対応できることが美容皮膚科のメリットだと思います」
患者数は保険診療のほうが多いというが、今後自費診療の幅を広げていくつもりだという。美容皮膚科は、保険診療とは異なる知識や治療手段を学ばなくてはならない。
「治療法や薬、機械など数多くあるので、セミナーを受けたり、業者さんの案内を受けたりして情報収集はおこなっています。どんな治療を取り入れていくか、どんな機械を購入するかは、選択をせまられますが、ニーズに合っていなければ意味がないと考えています。患者さんがどんな治療を望んでいるのか、何を悩んでいるのかを吸い上げて、治療に反映していきたいです」